懲戒解雇の意味と手続き

最終更新日 2023年12月20日

懲戒解雇とは、労働者に罰を与えるための解雇のことを指します。
科されるペナルティには様々な種類がありますが、その中でも極めて重い処分です。
転職時には前職の退職理由等も聞かれますが、応募書類に自己都合退職と書くと虚偽の記載に当たりますので注意しなければなりません。
人事担当者が前の職場に確認するようなケースでは、虚偽の記載をしたことが知られてしまい、採用を取り消される可能性もあります。

懲戒解雇以外の処分について

ちなみに、懲戒解雇以外の処分には懲戒免職・停職・戒告・減給等があり、それぞれの判断において何が妥当なのかを判断することになります。
多くのケースでは軽い処分から行っていき、改善されなければ思い処分へと移行していくことが多いようです。
もちろん重大な規律違反があれば、最初から重い処分を下されることもあります。
何らかの違反をすると、簡単に解雇されてしまうのではないかと不安に感じるかもしれませんが、労働契約法の15条で「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効」と規定されているため、むやみやたらに解雇できるものではありません。
客観的で合理的な理由、社会通念上の相当性という言葉に合致しているのか、それぞれのケースに当てはめて考える必要があります。

懲戒解雇に該当するケース

該当するケースとして挙げられるのが、仕事上占有している他人の財産や物を横領業務上横領です。
その会社だけの問題に留まらず、刑罰の対象にもなる行為です。
無断欠勤も度重なると該当する理由となりますし、最近問題になっているセクシャルハラスメントやパワーハラスメントも懲戒解雇になり得ます。
転勤を拒む等の重要な業務命令の拒否も理由になり、経歴詐称も同じように処分を受けるかもしれません。

懲戒解雇ができるかどうかを確認する場合

懲戒解雇ができるかどうかを確認する場合、まずは就業規則を確認します。
就業規則にきちんと記載しておくことが必要であり、記載がない場合には適切に管理することが難しくなります。
就業規則には絶対的記載事項というものがあって、そこに退職に関する事項(解雇の条件を含む)についての規定を記載することが義務付けられていますので、担当部署に在籍する場合には一度見直しておくことが大切です。
通常の形での退職ではありませんから、一般的に支払われる退職金と同等の額がもらえることはほとんどありません。
多くの会社では退職金の支給額を減らしたり不支給とする決定を行っています。
退職金の条項が含まれていないと、このあたりでも揉める可能性があるため、規定に関してきちんと定めておくことをお勧めします。
万が一規定で定められていなければ、減額したり不支給とすることができず、一方的に処分すれば裁判にまで発展するかもしれません。
ただし、過去の判例では「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背信行為があった場合には減額を認める」との決定が下されていますので、内容によっては認められることもあります。

懲戒解雇の規程に書いてある解雇理由が社会的妥当性を持つか

就業規則を見直す上で重要になるのが、懲戒解雇の規程に書いてある解雇理由が社会的妥当性を持つかという点です。
正当性の範囲について迷ったら、過去の判例を見返したり専門家に相談する等して、一般的に妥当だと思われる内容にすることが求められます。
社員を罰する時には平等待遇の原則というものもあり、同じ違反をしたら同じレベルの処分を下すことが重要です。
違反内容が同じなのに、一方は減給で済んでいてもう一方が解雇になったら著しく公平性を欠いていると言わざるを得ません。
従業員を平等に扱うことが大前提であり、私情を挟まないように細心の注意を払う必要があります。
その違反に関して一度処罰を下している場合には、二重に処罰を下すことはできません。
つまり、一度何らかの処罰を科した後に、やはり軽すぎたのではないかと感じてもう一度何らかの処分を実施するということはできないのです。
また、就業規則に定める前の行動について処分することもできませんので、検討している場合には気をつけましょう。

まとめ

解雇は使用者側によって労働契約が終了となることであり、普通の退職とは異なります。
解雇にも2種類あり、普通解雇なら解雇予告手当が必要となります。
退職金は規定通りに支払われ、失業給付では会社都合退職として給付日数について有利な扱いを受けることが多いのが特徴です。
それに対し懲戒解雇では、解雇予告手当が不支給のことも多いですし、失業給付では自己都合退職と同じ扱いとなって給付日数が短いのが特徴です。
退職金も減額や不支給の場合あって、内容的にはとても厳しいものになります。
次の仕事を探そうと考えている時にも影響があり、申告する義務が生じますので、該当するような行為をしないように日頃からしっかりとした態度で仕事に臨みたいところです。